個人戦からチーム戦へ「場のデザイン」が会社を動かす!
「社長、ちょっとよろしいですか?」
事務から呼ばれ、その途中で現場から電話、取引先からは納期の問い合わせ、夕方には銀行との打ち合わせ…。
ある中小企業の社長の一日をそばで見ていて、私は思わずこう感じました。
「これはもう、"社長ひとりの総戦力だな…」
社長ひとり総力戦の会社
当社が関わる中小企業でも、同じような状況は少なくありません。
社長は、事務、経理、営業 労務…と、何から何まで全部担当。
従業員が10人未満くらいだと、社長がすべての業務を同時並行でこなしていても、なんとか回ります。
いわば「ワンマン経営」が、いい意味で機能している状態です。
ところが、従業員が数十人規模になってくると、様子が変わってきます。
経理担当はいるものの、「決められた処理」をこなすだけ。
営業担当は仕事を取ってくるが、その後の利益まで目が届かない。
現場担当は、目の前の現場に集中し、他部署に関心なし。
会社全体のことを考え、仕事の「済み済み」を気にしているのは社長だけ。
小さなトラブルから大きな問題まで、すべてが社長のところに集まってきます。
やがてこうなります。
・ 社長のキャパシティを超える
・ どうしても目が届かないところが増える
・従業員にやる気がない、能力が低いと感じる
そして、その影響は数字に表れてきます。
・ 原価に合わない仕事を続けてしまう
・ ムダな作業・やり直しが増える
・ 生産性が落ちる
・ 資金繰りが厳しくなり、借入が増える
まさに、個人戦(社長ワンマン)の限界です。
「できない従業員」ではなく
「場がない会社」
この段階になると、社長からはこんな言葉が出てきます。
「うちの従業員は、言わないと動かない」
「優秀な人材がいない」
「結局、自分がやったほうが早い」
本当にそうでしょうか。
私が現場を見ていて感じるのは、
・ 仕事のやり方がバラバラ
・ 部署間で情報がつながっていない
・ 本音で話し合う「場」が用意されていない
という、会社側の「環境づくり(場づくり)」の問題もかなり大きいということです。
個人戦からチーム戦へ

2000年代以降、「成果をあげる組織」についての研究が世界的に盛んになりました。
世の中の移り変わりが早く、カリスマ社長・ワンマン経営だけでは対処しきれなくなってきたからです。
こうした研究の中で共通しているのが、
社員一人ひとりが自発的に集まり、知恵や情報を持ち寄る“場”を持つ組織は強いということです。
要するに、従業員が熱意を持って、わいわい議論できる「場」があるかどうかです。
その「場」では、こんなことが起きています。
部門をまたいだ、自然で自由な情報交換
「そういえば、あの案件さ…」 「ついでにこれも共有させて」
気兼ねのない、本音のコミュニケーション
「正直、このやり方はしんどいです」 「こうした方が早くないですか?」
感情の交流や心理的な刺激
「それいいですね!」「それはさすがにマズいです」
そこから、
・ 新しいアイデア
・ 判断基準や価値観の共有
・ 仲間意識、一体感
といったものが生まれていきます。
「タテ」のマネジメントだけでは回らない
相手は「人」です。
命令したからと言って、心の底から動いてくれるとは限りません。
本当に人が動くときには、
・ 同僚からの刺激
・ 仲間からの期待
・「自分もやらなきゃ」という感情の共鳴
といった、「ヨコの相互作用」が大きく影響します。
ここで引用したいのが、一橋大学名誉教授であり、「場」のマネジメント研究の第一人者として知られる伊丹敬之先生の言葉です。
私はこの言葉を、社長がすべてを細かくコントロール(制御)するのでもなく、
現場を完全に放り出してしまう(放任)わけでもなく、
その中間で、
従業員同士の「ヨコの相互作用」が自然に生まれる「場」をデザインし、支えることこそが、経営の重要な役割である
というメッセージだと理解しています。
中小企業の現場を見ていると、この言葉の重みを強く実感します。
社長の新しい仕事は「場のデザイン」
制御と放任のあいだで、「場」をつくり、育てる。
個人戦からチーム戦へと組織を変えていくうえで、社長に求められる役割も、少しずつ変わってきています。
今回は、
・ 社長ワンマンの限界
・ 個人戦からチーム戦への転換
・ そのカギとしての「場」という考え方
についてお話ししました。
とりあえず今日はここまで。
次回は、
「では、実際に中小企業で“場”をどうつくるのか?」というテーマで、
・ 会議やミーティングの工夫
・ 物理的なレイアウト
・ 小さな会社でも明日から試せる「場づくり」の具体策
を、もう少し掘り下げてお伝えしたいと思います。