【改善レポート1 製造業】
「受注は好調。でも現預金は減少・・・銀行からは厳しい視線」
ご相談いただいたのは、売上規模5〜10億円の製造業の会社でした。
ここ数年は受注も順調で、売上も右肩上がり。
社長も安心していました。
でも・・・なんだか預金残高が減っている。
決算書を開いてみると——
・利益はほとんど出ていない
・キャッシュフローは悪化
・借入金の返済原資が十分に確保できていない
・老朽化した設備も更新できない
・金融機関からも厳しい意見が増えてきている
「こんなに頑張っているのに、なぜだろう?」
社長の表情には、疲れと不安がにじんでいました。
「感覚」ではなく「数字」で整理解剖する
こういうご相談のときに、私が一番最初にやることはシンプルです。
決算書(損益計算書)を分解して眺めること。
・売上総利益率
・外注費比率
・人件費比率
…といった指標を同規模・同業の黒字企業と並べて見ていくと、
「どこが普通で、どこが少しヘンなのか」が浮かび上がってきます。
この会社も、特徴はひと目でわかりました。
売上高に対する外注費比率が、同業他社の2倍以上と極端に高い一方で、
人件費比率は同業他社とほぼ同じ水準のまま。
これは裏返せば、 工場の稼働率が十分に上がっていない状態で、
外注を多用しているのではないかということを意味します。
本来であれば自社工場で処理できるはずの仕事が外に流れ、
工場側の生産性が落ちている可能性が高い──そんな仮説が、この数字から見えてきました。
という構造になってしまっており、それが利益を押し下げていたのです。
戦略は間違っていなかった。「仕組み」が追いついていないだけ
なぜそうなっているのか。
背景を知るために、社長にこれまでの経緯をじっくりお聞きしました。
以前は——
外注はほとんど使わず、
自社でこなせる仕事だけを丁寧に受けるスタイルでした。
しかし、業界の変化やお客様のニーズ、
そして自社の立ち位置を考えた結果、社長は大きな方針転換をされていました。
同業他社とのネットワークを活かせるのが、自社の強み。
受注は極力断らず、仕事の間口を広げる
自社でできない・不得意な工事は、その分野が得意な外注先へ
自社が得意な工事に自社のリソースを集中する
いわば、一部「商社」のような立ち位置で仕事を回すスタイルです。
産業集積地という土地柄もあり、ネットワークを活かすという発想自体は、とても良いものでした。
実際、私は社長にこうお伝えしました。
「戦略としては、むしろ“良い選択”だと思います。
ただ、その戦略に見合う“体制”と“仕組み”が、まだ追いついていないだけですね」
本来、商社的な立ち位置をとるのであれば、
売上高に対する人件費比率は、もっと低くなっていくはずです。
しかし、外注が増えても、工場内の仕事の振り方や生産性が以前のままであれば、
「人件費は減らないのに、外注費だけが増える」という状態になってしまいます。
そこで私は、
「工場内の生産性や仕事の振り方に、見えないロスがあるのではないか」
という仮説を立てました。
実は、すでに社長が始めていた「2つの改善」
ヒアリングを進めていくと、社長がすでに動き始めていた改善も見えてきました。
① 時間チャージの見直し
長年据え置きになっていた、工数あたりのチャージ単価(社内の原価計算 の基準)を、最近見直していたこと。
② 人員の自然減を補充しない判断
高齢化などで退職された方について、安易に補充採用をせず、 配置転換や部署間の兼務でやりくりしていたこと。
「なんとなく、これ以上人を増やすのは違う気がして…」
と社長はおっしゃっていましたが、数字で見ると、これらは短期的な収益改善にしっかり効いていました。
直近の月次試算表を確認すると、すでに利益水準は改善傾向にありました。
「感覚」から「数字」へ。金融機関が納得するストーリーづくり

社長が感覚的に行ってきた打ち手を、数字とストーリーに落とし込む作業に入ります。
・時間チャージ見直しの効果
・人員削減・再配置の効果
・外注と自社施工のバランスを整理した場合の利益構造
これらを組み合わせ、将来の損益シミュレーションを作成しました。
その結果——
「このペースで改善策を続ければ、利益水準はここまで持っていける」
「返済原資も、このくらいの水準で確保できる見込みが高い」
ということが、数字としてはっきりと示せるようになりました。
この資料は、そのまま金融機関への説明資料として活用されました。
なぜ今は苦しいのか
何を変えたのか
これからどう良くなっていくのか
これらを、感覚ではなく数字で説明できたことが、
金融機関との対話をスムーズにし、「返済原資は十分に確保できる可能性が高い」という評価にもつながりました。
売上はあるのにお金が残らないと感じたら
こんなふうにして、社長の「なんとなくおかしい」を数字と言葉に整理していくと、
金融機関との関係も、会社の進む道筋も、少しずつクリアになっていきます。
もし今、あなたの会社でも
「売上は伸びているのに、現預金はなぜか減っている」
「銀行からの視線が、ここ最近ちょっと厳しい気がする」
そんな感覚が少しでもあるようなら、一度立ち止まって決算書を一緒に眺めてみませんか。
“感覚”にモヤモヤしているうちは不安ですが、
“数字”で整理できれば、次に打つべき手は必ず見えてきます。