【改善レポート ゲストハウス】「地域のために」と「ちゃんと稼ぐ」を両立させるには

【改善レポート ゲストハウス】「地域のために」と「ちゃんと稼ぐ」を両立させるには

【改善レポート ゲストハウス】「地域のために」と「ちゃんと稼ぐ」を両立させるには


「地域のためになる場所でありたい。でも、正直このままでは続けていけるか不安で…」

昔ながらの下町にあるゲストハウスと飲食店を営む社長が、静かにそう話してくれたところから、この支援は始まりました。

地域から愛される「いいお店」なのに


その会社は路地裏の雰囲気が残るエリアで、
ゲストハウスと小さな飲食店を運営しています。

ゲストハウスでは、まちの歴史や文化を感じられるしつらえ。

隣の飲食店では、早朝から仕込んだ温かい朝食、旅人と常連さんが囲む夕食。

オリジナルグッズを作ったり、地域の人も交えた交流イベントを開いたり。

国内外からお客さんが集まり、いつ訪れても誰かが笑顔で会話をしている。

スタッフもみな、このまちやお店が大好きで、接客にもそれがにじみ出ています。


一言でいえば、本当に「地域にとけこんだ、いいお店」でした。

「いいことをしているのに、利益が残らない」


ところが、帳簿を開くと現実は厳しいものでした。

ファンは多いのに、利益は思うように残っていない。

スタッフは「地域貢献」「おもてなし」の意識は強いものの、
「ちゃんと稼ぐ」という視点はあまりない。

その結果、設備投資や次のチャレンジに回せるお金が足りず、社長は常に資金繰りの不安を抱えていました。

顧問税理士さんを通じてご相談をいただいた時、社長の頭の中には二つの問いがありました。

「このまま“いいことをやっているお店”で終わるのか」
「それとも、持続可能なビジネスとして続けていけるのか」

まさに、分かれ道に立っている状態でした。

まずは「数字」をスタッフ全員のものにする


今回の支援で最初に取り組んだのは、
経営の課題を、社長だけでなくスタッフ全員の課題にすることでした。

社長・税理士さん・私の三者で、
まずゲストハウスと飲食店を部門別に分けて損益を整理しました。

ゲストハウスはどれくらい売上があり、どれくらい原価と経費がかかっているのか。
飲食店はどうか。
それぞれの利益はどの程度出ているのか。

経済産業省の「ローカルベンチマーク」をベースに、
数字と現場の状況を一枚のシートにまとめていくと、
どこに収益性の課題があるのかが、はっきりと見えてきました。

この資料をもとに、スタッフ全員に集まってもらい、
会社全体として収益面に課題があることを包み隠さず共有しました。

「このお店を続けたい。そのためには、今のままでは難しいかもしれない」

そんな現状認識を、まずは数字で揃えるところからスタートしました。

「こだわり」と「やるべきこと」を言葉にしてもらう


次のステップでは、ゲストハウスチームと飲食チームに、それぞれ宿題をお願いしました。

・日々の仕事の流れ
・その中で大事にしていること、こだわっていること
・本当はやるべきだけれど、できていないこと
・自分たちの事業への思い
・お客様に選ばれている理由は何だと思うか

これらを書き込めるシートを用意し、
一人ひとりがじっくり考えて記入し、社長に提出してもらいました。

後日訪問すると、
社長が全員分を印刷してテーブルに並べ、スタッフ全員で一枚ずつ目を通しました。

それぞれの意見を読み合わせていくと、

「お客様との距離感の近さ」
「地域とのつながりを感じてもらえる工夫」

といったポイントについては、全員が共通して大切にしていることが分かりました。

同時に、業務フローごとに分解して考えてもらっていたことで、

「このタイミングでひと言声をかけたほうがいい」
「チェックイン前にこんな説明を足したほうが安心してもらえそう」

など、具体的なアクション案もたくさん出てきました。

見てみると、すぐに取り組めそうな改善も多いのです。

「当たり前」にやっていた価値に、きちんと対価を


ここで効いてきたのが、最初に共有していた「収益性の現状」です。

数字を見たうえで議論していたからこそ、あるスタッフの方からこんな言葉が出てきました。

「私たちが当たり前だと思ってやっていたことって、
お客様にとっては、すごく価値があることなんじゃないですか?
だったら、その分の対価をちゃんともらうべきですよね」

まさに、「稼ぐ」という意識が生まれた瞬間でした。

そこから、

・自社の価格設定は妥当なのか
・同じようなコンセプトのゲストハウスや飲食店は、どんなサービス内容で、いくらくらいなのか

といった市場調査を行い、自分たちの立ち位置を整理しました。

結果として、

「自分たちが提供している価値のわりに、価格がかなり安かった」

という事実が、数字と比較で明らかになりました。

社長とスタッフで議論を重ね、価格改定を実施。

ちょうど瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)や大阪・関西万博といった追い風もありましたが、
値上げをしても客数が落ちることはなく、

むしろ
「この価格なら胸を張ってサービスを提供できる」
「ちゃんと対価をいただいているから、より良くしたいと思える」

と、スタッフ自身の納得感も高まりました。

「地域のために」と「ちゃんと稼ぐ」は、矛盾しない


今回の支援であらためて感じたのは、
「地域のために」と「ちゃんと稼ぐ」は両立していいし、むしろ両立させるべきだということです。

建設業でも、製造業でも、サービス業でも、

・地域のために何かをしている
・お客様のために手間を惜しまない
・長く付き合ってくれるファンがいる

にもかかわらず、

「利益がついてこない」
「値上げするのが怖い」

と悩むケースは少なくありません。

そんなときこそ、

・数字をオープンにし、
・業務を細かく分解し、
・現場の声と経営の数字をつなぐ

このプロセスが、状況を変える大きなきっかけになります。

「うちもスタッフの思いは強いのに、稼ぐ意識が今ひとつ…」

もし、そんな感覚が少しでもあれば、数字と現場の両方から一度整理してみませんか。

その伴走をしながら、

「地域にとけこんだ、いいお店」が、
「ちゃんと稼げる、続いていくお店」になるように支えること。

それが、私のような立場の役割だと思っています。

PROFILE
代表紹介

クラフトコンサルティング株式会社

石黒 貴裕

中小企業診断士 / MBA(経営学修士)

1984年、愛知県名古屋市生まれ。岡山県職員として約16年間、地域産業や行政の現場に携わる中で「現場に寄り添う経営支援」を志す。中小企業診断士として独立後、令和7年にクラフトコンサルティング株式会社を設立。経営者とともに考え、数字と実行の両面から伴走支援を行っている。

対応業種

製造業/建設業/サービス業/農業関連 など

専門領域

・経営改善計画の策定・実行支援
・資金繰り・キャッシュフロー改善
・収益構造・コスト管理
・補助金・金融機関対応支援
・組織設計・業務改善

所属

・中小企業診断士
・MBA(岡山大学 経営学修士)
・岡山県中小企業診断士会
・経営コンサルタント事業協同組合(OMBC)
・岡山県よろず支援拠点 コーディネーター
・岡山県農福連携サポートセンター サポーター

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